ふと「ここが人生折り返しなのでは?!」と思い立ち、中年にオススメされることの多いヘミングウェイの名作「老人と海」を再読しました。
正直、若いころは(英語教材だったかな)ピンと来なかったんですよね。うまくいかなかったな?って。それが、違うこれ熱すぎる成功譚だ!と響くように変わったのが興味深い。自分の半生をいま振り返ると、遮二無二の割に得たもの多くずいぶん幸運だったと思えるのですが、後にそれらを魚に重ね「夢をみる」のだろうか。これはもう少し人生重ねてみないとわからんですな。
名作だけあって翻訳たくさん出てまして、手に入る範囲で読み比べてみました。図書館を出た時にはもう海の上に数ヶ月いたような気分です。
よく取り沙汰される「the boyを何歳想定で訳すか」については、近年はどの訳者も考慮済ですので(「少年」を当てつつも子供すぎないなど)気にしなくて良いかも。それよりこの本、ほぼほぼ海上での老人のモノローグで進むので、老人の一人称やセリフの訳し回しの好みで選べば良さそうと思いました。
比較
各訳のポイントをメモしたので、以下のフォーマットで一部載せておきます。
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
|---|---|---|---|---|---|
| あればKindleリンク | あれば紙の本リンク | 地の文でManolinを指して | ManolinがSantiagoをどう呼ぶか | Santiago一人称 | モノローグで自分を指して |
He was an old man who fished alone in a skiff in the Gulf Stream and he had gone eighty-four days now without taking a fish.
“But man is not made for defeat,” he said. “A man can be destroyed but not defeated.”
有名な書き出し文と、海上でのこの本を代表するしびれるセリフ。帯に書いてあったりもするので引用の範囲かなと置いておきます。
翻訳者(敬称略)、出版/公開された順です
- 福田恆存(1953年-)
- 野崎孝(1977年)
- 中山善之(2013年)
- 小川高義(2014年)
- 石波杏(2015年)
- 高見浩(2020年)
- 今村楯夫(2022年)
- 島村法夫(2023年)
- 越前敏弥(2024年)
- 齊藤昇(2025年)
福田恆存(1953年-)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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中公文庫 (現在) |
少年 | お爺さん | おれ | 爺さん |
かれは年をとっていた。メキシコ湾流に小舟を浮べ、ひとりで魚をとって日をおくっていたが、一匹も釣れない日が八十四日もつづいた。
「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ」とかれは声に出していった、「そりゃ、人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」
- 「かれは年をとつてゐた。」旧仮名遣いでチャールズ・E・タトル商会から出版(1953年)。このとき原作にない「一日目」のような章立てがされています。
- その後 新潮文庫に収録(1966年)。仮名遣いを改める改版あり。2020年に新潮文庫が新訳に変わった後、中公文庫で復刊(2025年)
- Manolinが父親のことを呼ぶ”Papa”ですが、チャールズ・E・タトル商会の時はそのまま「パパ」訳だったのが、新潮文庫で「おとっつぁん」に変わってました。
野崎孝(1977年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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集英社 世界文学全集 |
少年 | おじいさん | おれ | じいさん |
彼はメキシコ湾流に独り小舟を浮かべて魚を獲る年老いた漁師であるが、一匹も釣れない日が今日で八十四日も続いていた。
「でも人間は負けるように造られちゃいないぞ」と、彼は呟いた「殺されることはあるが、負けることはない」
中山善之(2013年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
|---|---|---|---|---|---|
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柏艪舎 | 少年 | あんた | 俺 | じいさま |
彼は年老いた漁師で、小さな帆船にただ独りメキシコ湾流で漁を続けてきたが、もう八四日ただの一匹も獲物はなかった。
「しかし、男たるもの打ちのめされてはならない」老人は言った。「自滅することはありえるが、打ちのめされるのは許されない」
小川高義(2014年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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光文社 古典新訳文庫 |
少年 | じいさん | おれ | じいさん |
老人は一人で小舟に乗ってメキシコ湾流へ漁に出る。このところ八十四日間、一匹も釣れていなかった。
「だが、人間、負けるようにはできてねえ。ぶちのめされたって負けることはねえ」
石波杏(2015年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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青空文庫 | 少年 | サンチャゴ | 俺 | 爺さん |
彼は老いていた。小さな船でメキシコ湾流に漕ぎ出し、独りで漁をしていた。一匹も釣れない日が、既に八四日も続いていた。
「だが人間は、負けるように造られてはいない」彼は言った。「打ち砕かれることはあっても、負けることはないんだ」
- 主に青空文庫などで翻訳発表をされている方です。マノーリンが老人を呼ぶとき名前呼びなのが新しいですね。
高見浩(2020年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
|---|---|---|---|---|---|
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新潮文庫 | 少年 | おじいさん | おれ | じいさん |
漁師は老いていた。一人で小舟を操って、メキシコ湾流で漁をしていたが、すでに八十四日間、一匹もとれない日がつづいていた。
「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」老人は言った。「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」
- 新潮文庫Star Classics名作新訳コレクション として新訳に
- この新しい新潮文庫のカバーイラスト好きです。他にない、海中からの魚視点🦈!
今村楯夫(2022年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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左右社 | 若者 | じいさん | わし | じいさん |
老人がひとり、小舟に乗ってメキシコ湾で漁をしていた。一匹も釣れない日が八四日も続いていた。
「だが、人間は打ち負かされてはならない」老人は言った。「打ち砕かれることはあっても、負けることはない」
島村法夫(2023年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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小鳥遊書房 | 少年 | じいちゃん | おれ | 爺さん |
彼は年老いていて、ひとり小舟に乗り、メキシコ湾流で漁をしていた。これまで八十四日間も一匹も釣れないでいた。
「だけど、人間は負けるために造られているんじゃない」彼は言った。「人間はめちゃめちゃにやられるかもしれないが、負けはしない」
- 原作出版時の挿絵を収録しています
- 挿絵はたとえばここで見れますが、でかいカジキは一見の価値ありです
越前敏弥(2024年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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角川文庫 | 若者 | じいちゃん | おれ | じいさん |
その男は老人で、小舟にひとりで乗ってメキシコ湾流で漁をしていたが、この八十四日間、一匹の魚も釣っていなかった。
「しかし、人間は負けるようにはできていない」老人は言った。「叩きのめされることはあっても、負けはしない」
齊藤昇(2025年)
| 書影 | 出版 | the boy | “you” | “I” | “the old man” |
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文春文庫 文春クラシックス |
少年 | じいちゃん | 俺 | じいさん |
その男は年老いていた。小舟でメキシコ湾流に乗って孤独な漁に出ていたが、すでに八十四日間も釣果が上がらない。
「しかし、男ってやつは負けるようにはできていないんだ」と、老人は言った。「ぶちのめされることはあっても、敗北はしない」
- ほとんどの版では後半に解説とかヘミングウェイ年表とかで紙幅を埋めています。それに対し文春文庫ではヘミングウェイのニック・アダムス・ストーリーズからもりもり短編を収録することで埋めています
- Kindle版は「老人と海」収録だけで安価になっているぽい









