「老人と海」和訳比較

Naoki Tomita Naoki Tomita June 17th, 2026 #読書

ふと「ここが人生折り返しなのでは?!」と思い立ち、中年にオススメされることの多いヘミングウェイの名作「老人と海」を再読しました。

正直、若いころは(英語教材だったかな)ピンと来なかったんですよね。うまくいかなかったな?って。それが、違うこれ熱すぎる成功譚だ!と響くように変わったのが興味深い。自分の半生をいま振り返ると、遮二無二の割に得たもの多くずいぶん幸運だったと思えるのですが、後にそれらを魚に重ね「夢をみる」のだろうか。これはもう少し人生重ねてみないとわからんですな。

名作だけあって翻訳たくさん出てまして、手に入る範囲で読み比べてみました。図書館を出た時にはもう海の上に数ヶ月いたような気分です。

よく取り沙汰される「the boyを何歳想定で訳すか」については、近年はどの訳者も考慮済ですので(「少年」を当てつつも子供すぎないなど)気にしなくて良いかも。それよりこの本、ほぼほぼ海上での老人のモノローグで進むので、老人の一人称やセリフの訳し回しの好みで選べば良さそうと思いました。

比較

各訳のポイントをメモしたので、以下のフォーマットで一部載せておきます。

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
あればKindleリンク あれば紙の本リンク 地の文でManolinを指して ManolinがSantiagoをどう呼ぶか Santiago一人称 モノローグで自分を指して

He was an old man who fished alone in a skiff in the Gulf Stream and he had gone eighty-four days now without taking a fish.

“But man is not made for defeat,” he said. “A man can be destroyed but not defeated.”

有名な書き出し文と、海上でのこの本を代表するしびれるセリフ。帯に書いてあったりもするので引用の範囲かなと置いておきます。

翻訳者(敬称略)、出版/公開された順です


福田恆存(1953年-)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海 (中公文庫 ヘ 7-1) 中公文庫
(現在)
少年 お爺さん おれ 爺さん

かれは年をとっていた。メキシコ湾流に小舟を浮べ、ひとりで魚をとって日をおくっていたが、一匹も釣れない日が八十四日もつづいた。

「けれど、人間は負けるように造られてはいないんだ」とかれは声に出していった、「そりゃ、人間は殺されるかもしれない、けれど負けはしないんだぞ」

野崎孝(1977年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
集英社 世界文学全集〈77〉 集英社
世界文学全集
少年 おじいさん おれ じいさん

彼はメキシコ湾流に独り小舟を浮かべて魚をる年老いた漁師であるが、一匹もれない日が今日で八十四日も続いていた。

「でも人間は負けるように造られちゃいないぞ」と、彼は呟いた「殺されることはあるが、負けることはない」

中山善之(2013年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海 (柏艪舎文芸シリーズ シリーズ世界の文豪) 柏艪舎 少年 あんた じいさま

彼は年老いた漁師で、小さな帆船スキフにただ独りメキシコ湾流で漁を続けてきたが、もう八四日ただの一匹も獲物はなかった。

「しかし、男たるもの打ちのめされてはならない」老人は言った。「自滅することはありえるが、打ちのめされるのは許されない」

小川高義(2014年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海 (光文社古典新訳文庫 Aヘ 1-3) 光文社
古典新訳文庫
少年 じいさん おれ じいさん

老人は一人で小舟に乗ってメキシコ湾流へ漁に出る。このところ八十四日間、一匹も釣れていなかった。

「だが、人間、負けるようにはできてねえ。ぶちのめされたって負けることはねえ」

石波杏(2015年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海 青空文庫 少年 サンチャゴ 爺さん

彼は老いていた。小さな船でメキシコ湾流に漕ぎ出し、独りで漁をしていた。一匹も釣れない日が、既に八四日も続いていた。

「だが人間は、負けるように造られてはいない」彼は言った。「打ち砕かれることはあっても、負けることはないんだ」

高見浩(2020年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海 (新潮文庫) 新潮文庫 少年 おじいさん おれ じいさん

漁師は老いていた。一人で小舟を操って、メキシコ湾流で漁をしていたが、すでに八十四日間、一匹もとれない日がつづいていた。

「だが、人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」老人は言った。「叩きつぶされることはあっても、負けやせん」

今村楯夫(2022年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
新訳 老人と海 左右社 若者 じいさん わし じいさん

老人がひとり、小舟に乗ってメキシコ湾で漁をしていた。一匹も釣れない日が八四日も続いていた。

「だが、人間は打ち負かされてはならない」老人は言った。「打ち砕かれることはあっても、負けることはない」

島村法夫(2023年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
挿し絵入り版 老人と海 小鳥遊書房 少年 じいちゃん おれ 爺さん

彼は年老いていて、ひとり小舟に乗り、メキシコ湾流で漁をしていた。これまで八十四日間も一匹も釣れないでいた。

「だけど、人間は負けるために造られているんじゃない」彼は言った。「人間はめちゃめちゃにやられるかもしれないが、負けはしない」

越前敏弥(2024年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海 (角川文庫) 角川文庫 若者 じいちゃん おれ じいさん

その男は老人で、小舟にひとりで乗ってメキシコ湾流で漁をしていたが、この八十四日間、一匹の魚も釣っていなかった。

「しかし、人間は負けるようにはできていない」老人は言った。「叩きのめされることはあっても、負けはしない」

齊藤昇(2025年)

書影 出版 the boy “you” “I” “the old man”
老人と海/殺し屋 (文春文庫 へ 10-1) 文春文庫
文春クラシックス
少年 じいちゃん じいさん

その男は年老いていた。小舟でメキシコ湾流に乗って孤独な漁に出ていたが、すでに八十四日間も釣果が上がらない。

「しかし、男ってやつは負けるようにはできていないんだ」と、老人は言った。「ぶちのめされることはあっても、敗北はしない」