先日社内LTにて、半年間毎週早退して参加させてもらった国立感染症研究所2014年度後期講座(カリキュラムはこちら)をLTしました。発表は講義資料の一部を紹介しているためそのまま上げられないのですが、以下に要旨だけ箇条書きにしました。
雰囲気
導入
- 感染症とたたかう人たち
- 毎週テレビでなんやかんや怪獣とたたかっているヒーローのよう!
- 講義内容
- 感染症全般と、特に現在日本で定期接種化対象になっているワクチンについて
- 感染研の現場最先端のスタッフによる現在進行形の話題(←貴重)を含む講義
- 半年間、毎週火曜2時間。レポート提出あり
- 参加者は製薬会社や保健衛生関連職がメイン、一般人ほぼ私のみ。という意味でも珍しいフィードバックとなります
- その中から、特に比較的身近な以下感染症について
- 麻疹・風疹
- 結核
- インフルエンザ
麻疹・風疹
多屋馨子先生、駒瀬勝啓先生の講義より)
- 共通点として、治療法はないがいいワクチンがある(麻疹風疹混合ワクチン)
- そして胎児への影響が甚大である
- 麻疹
- 世界的に見て(防御法がある中で)幼児の死亡率の1位
- 麻疹の感染力は最強レベル(基本再生産数=平均うつす数がインフルエンザ2-3のところ、麻疹は12-18。なお風疹は5-7) 出典: 感染症情報センター
- さらに不顕性感染無し(初めての人は100%発症する)
- WHO、2012年までに根絶目標たてた。日本は先進国ではだいぶ遅れた。からの、
- 2015/3/30 WPRO (日本もここに所属)が排除認定。祝
- 風疹
- 2013、社会人男性中心にアウトブレイクした。会社からも補助金が出た
- なぜアウトブレイクしたか。35歳(2014年4月時点)以上の男性でワクチン接種の機会がなかったため。免疫がないスポットでいつかアウトブレイクするもの
- 発疹出て、会社休んだのは29%だけ
- 新生児の先天性風疹症候群が出てしまった。泣
- 流行の後で下火となり皆の記憶が薄れた今の状況がヤバい。数年以内に再度風疹アウトブレイクする可能性がある状態
- 語気強く語る予防接種室室長
- まわりに妊婦がいなくても全員が2回ワクチン受けた状態にするのがベスト。1度だと5%ほど、抗体が付かないケースがあるため。
- 集団免疫(Herd Immunity)という考え方を持とう
結核
牧野正彦先生の講義より)
- ちょっと昔は死亡率の1位だった
- ワクチン = BCG = 腕のスタンプ
- 実は効いていなかったことがわかっている
- 結核が抗酸菌であるため、メモリー細胞への抗原提示しにくいのが原因
- 感染研の結核ワクチン開発者の話。酸化抑制の方法で10倍
- さらにライソゾームから漏れていた「もったいない」タンパク成分を有効活用するしくみで20倍の効果がでた
インフルエンザ
長谷川秀樹先生、阿戸学先生、板村繁之先生の講義より)
- なぜか毎年冬期にやってくるやっかいなウイルス
- 人獣共通感染症。カモがカモ。全種類のインフルエンザにかかるが、本人(本カモ?)は発病せず他の動物へうつす
- RNAウイルス。1年でネアンデルタール人が現代人になるまでくらいの世代交代をする。これにより抗原性が変化しやすい。
- ワクチン生産は流行る前に予測して始めるので「外れる」ことがある
- 全員が免疫を持たない、致死率の高いウイルス(H5, H7)が恐れられている
- 現在の注射のワクチンは『感染を防ぐ』ものではない
- 求められている新ワクチン: 変異した抗体にも効く+未知の型にも効く+感染を防ぐ
- アジュバントの決定打みつけられなかった
- 多量体IgA抗体がカギであることがわかった
- より「自然感染に近い」というアプローチで、経鼻粘膜投与型インフルエンザワクチンの開発のお話。ぜんそくのような、鼻にぷしゅっと吹きかけるだけ、痛くない
- マウスの実験で、感染さえしない、交叉防御、100%というすばらしい結果が出る
出典 - 人間においても、3回目で結果がでた
- 現在開発へ向けて進んでいる。製品化は5年ほどか。
まとめ
- 人類と感染症の戦いは始まったばかり
- 麻疹・風疹: 根絶へ向けて、妊婦以外の意識の高さが必要
- 結核: 現在進行中の病気である。開発レース中。日本もよい成績で走行中
- インフルエンザ: 新しいワクチンの発売をおたのしみに