一生懸命だと知恵が出るのかどうなのか

いい話bot」とか、「名言まとめ」で見かけるようになった

「一生懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る。」
(武田信玄)

確かに武田信玄は人心掌握型の名将であったようだが、これ言ったの金八先生のほうの武田じゃなくて~?というか、良い言葉感ありまくりすぎて違和感が。まあしかし言ったのであれば学ぶこともあろうと信玄の名言と前後の歴史解説本を数冊読んでみた。… のだけど出てこなーい

注意してググりなおすと、「一生懸命」という単語の語源が「一所懸命」から来たことから考え、少なくとも江戸以降の創作であろうというブログ(2013年投稿)が見つかる。
http://yarinokoshi.blog.so-net.ne.jp/2013-07-13

確かに、語源である「一所懸命」まさに戦国時代の言葉であり、現代人が受ける意味として信玄は使わないだろうね。逆に「一所懸命だと知恵が出る」と使ったとしたら要は死ぬ気でやれという、名言というかスパルタ感満載な言葉である。

創作だとしたら誰なのか。と Google の日付指定検索でがんばって探したところ、拡散されたのは 2010年ごろから。おそらくソースは twitter の名言botであり、それが「まとめ」られたりしてさらに拡散しているようだ。2010年以前だと武田信玄の言葉としての言及は無くなる。そのまま2002年までさかのぼったところで、どうやら答えを見つけた。

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名言の花束というタイトルのページ。
http://www.urban.ne.jp/home/yasuito/meigen5.html

ここでは「出所不明」となっている! そして一つ上の名言が武田信玄である! おそらくここから名言botの中の人がコピペする時、二つの行を両方とも武田信玄のものとしてデータベース化してしまったのではないだろうか。

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この名言集ページは福永硝子という福岡の会社サイトのおまけコーナーであり、1997年くらいから2012年ごろまで更新されていたらしい。「ホームページを作って公開してみた」系じゃないかと思う。朝礼とかで名言を紹介する詳しい人がいるが、そういうもののログなのではないかな。

その後、どうやら正範語録という3連詩(?)が出典らしいことがわかった。つまり元には前後の文がある。あと完全に現代の作と思われる。これについては作者不明とのことだが、この誰かの「いい話」が校長先生ぽい人などによく引用されて伝わっている模様。

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名言好きな福永硝子の人もこれを知っており、真ん中のいいところを出所不明として紹介されたのだろう。図らずもたまたま武田信玄の名言の次の行であった。

武田信玄は言っていないが、良い言葉であることは確か。

2015年現在、すでに多数「武田信玄はこんないいこと言っています。…」と紹介されまくっていて、ネット上ではすでに武田信玄の言ったことになりつつあるというのが面白い